みんなの花魁でなくなった夜 ー紫の花魁は、僕だけに微笑むー

みんなの花魁でなくなった夜 ー紫の花魁は、僕だけに微笑むー_1

夜の街に咲く、美しい紫髪の花魁。

誰にでも微笑み、
誰の隣にも座るはずだった彼女は、
少しずつ変わっていった。

最初は、ただの遊びだった。
ほんの気まぐれ。

一夜限りの距離感。
そう思っていたのに――

気づけば彼女は、
他の誰よりも長く、僕の隣にいるようになっていた。

「また会いに来たの?」

紫髪を指先で揺らしながら、花魁は微笑む。

「ふふ…本当に物好きね。」

けれど、その声はどこか嬉しそうだった。

「今日は、どんな顔で私を見るの?」

ゆっくり近づく距離。
甘い香りがふわりと漂う。

「他のお客さんには見せない顔、あるんだ。」
「…知りたい?」

静かな視線が絡む。

「ねぇ。」
「あなたの前だと、花魁でいられなくなるの。」

少し困ったように笑って、彼女はそっと目を細める。

「こんなの、ずるいよね。」
「本当は、みんなに平等じゃなきゃいけないのに。」

それでも彼女は、僕の隣から離れない。

「でも――」
「今夜だけは、あなたのものになってもいい?」

夜の街の灯り。
誰にも言えない秘密の時間。

かつて‘みんなの花魁’だった彼女は、
今夜、僕だけに微笑んでいる。

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